| 第1回
東京工芸大学構造実験室における実験(昭和58年度)
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大学の理事会にお願いしていた建築学科の構造実験室と水平加力試験のための反力フレームが昭和57年度末に完成しましたので、58年度より、かねてから目標としていた「在来構法による木造建物の耐震構法開発に関する研究」に着手することに致しました。最初のテーマは「ラス下地板の張り方と耐震性能の関係について」で、この実験のために梁間3.64m 桁行6.37m 高さ3m、和室でいうと8畳と6畳の2部屋分の実大軸組を卒業研究生といっしょに造りました。軸組ができ上がると次は下地板です。軸組の両側面合計6箇所に下地板を張りました。ラス下地板の張り方は図1.のように3種類で、一番上の「水平張り」は住宅金融公庫の木造住宅工事共通仕様書にならった張り方で、二番目の「斜め張り」は同じ材料を斜め45度に張ったものです。三番目の「斜め補強張り」は、1枚の耐震壁の4隅の接合部のうち、向かい合う2隅に三角形のガセットプレートを、残りの2隅には幅の広い下地板を取り付けて、4隅の接合部をすべて補強し、残ったところに「斜め張り」と同じ下地板を張ったものです。
さて、ここで実験の概要と荷重変位曲線について簡単にご説明いたします。採用した試験方法は静的加力試験というもので、妻面上部に設置した鉄骨製の加力桁(写真右側上部にあって2列に穴があけられている横長の部材)の中央に水平荷重(水平方向の力で略して荷重ともいう)をかけて、荷重の大きさと桁
(柱頭)の変位量を測定しました。荷重は0から出発して徐々に増やし、変位が5mm、10mm、15mmと5mm増えるごとに荷重を測定します。測定したデータはそのままでは判りにくいので、グラフに表わします。グラフは通常、縦軸に荷重、横軸に変位をとり、各変位に対する荷重をグラフ上にプロットしていきます。こうして出来上がったグラフを荷重変位曲線といいます。
図2.荷重変位曲線は、この実験で得られた3仕様の荷重変位曲線を一つのグラフに描いたものですが、同じ変位でも仕様により荷重の違いが見られます。当然のことですが、荷重の大きいものほど丈夫で耐震性が大きいということです。この3仕様では「斜め補強張り」が一番丈夫で、次が「斜め張り」、最後が「水平張り」ということが判ります。しかし、実験の結果だけで決めてしまうのは問題です。「斜め補強張り」は確かに丈夫ですが、これはとても手間のかかる方法です。そこで私は、この実験結果と施工性の両方を考慮して、「斜め補強張り」に用いた「三角形のガセットプレート」と「下地板の斜め張り」を併用することにより、実用的でかつ丈夫な耐震壁が造れるのではないかと考え、引続き実験することにしました。
実験室と反力フレームが完成し、念願の実験に着手したものの、最新の計測機器はまだ購入できなかったので、変位は測点ごとに設置したダイヤルゲージで測定しました。そのため、最大変位量は60mmと少なく、かつ、精度のほうも決して良いものではありませんでした。しかしながら「ラス下地板の斜め張り」の効果を確認できたので、地震に強い耐震壁の開発に対する展望が開けました。
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