今年度から、木造住宅の起源ともいうべき軸組構法の耐震壁について、長期にわたる総合的な実験を開始することにしました。そこでまず、水平加力試験に必要な加力装置・変位計・測定機等を購入しました。変位計については、柱脚の浮き上がり等を測定するための短いもののほかに、柱頭(桁)の水平変位を測定するための250mm用変位計も数本購入しました。この250mm用変位計を用意していたので、柱頭の変位約200mmまでデータを採ることができ、強度とか粘り強さ等の比較に大変役立ちました。
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最初は単体試験から始めることにしました。単体試験体用の基礎は公庫の仕様書を参考にして鉄筋コンクリート構造とし、繰り返しの使用に耐えられるよう一回り丈夫なものを造りました。また、基礎と土台を結ぶアンカーボルトは直径13mmのものを3本埋め込みました。基礎の次は試験体用軸組ですが、長期にわたる実験のデータを、同じ座標軸の上で比較することができる様に、その構成の条件を揃えておくことにしました。以下に軸組構成の手順についてご説明します。基礎の上に長さ2mの土台を敷きアンカーボルトで固定し、土台の上に91cm間隔で柱を3本建て、柱の頭部を桁で繋ぎました。試験体の高さは柱材の定尺3mを目一杯使って、土台の上端から桁の上端まで3mとしました。これは、耐震的に一番不利な条件のデータを採っておけば、すべての住宅に適用できるという考えによるもので、実験のあり方としては正しかったと思います。基礎と単体試験体用軸組はこれででき上がりですが、この軸組の構成は財団法人日本建築センターが耐震壁の性能を評価するときの軸組とほぼ同じです。(図1参照)なお、基礎は繰り返し使用しましたが、軸組は実験ごとに新しい材料で造りました。

< 図2 > |
使用部材については、柱、土台、桁すべて、市販されている木材のうち一番安くて一般的な米栂105mm角を使用することにしました。以上の条件で造った軸組に、耐震要素を取り付けることで試験体はでき上がりですが、60年度は長期計画の第一歩なので、耐震要素として45×90筋かいを採用しました。公庫の仕様書にそって45×90筋かいを入れた試験体と、同じ筋かいで端部の接合方法を工夫した試験体との比較をすることにしました。公庫仕様の筋かい端部の仕口として採用したのは、昭和60年度版住宅金融公庫木造住宅共通仕様書(解説付)参考図5.2.1-2筋かい上下端の仕口のうち(A)「横架材及び柱に大入れ」という方法で「N75釘3本斜め打ち」と「ひら金物(SM)当て釘打ち」を併用したものです。これは参考図の最初に示されていることでも判りますが、公庫の融資住宅では当時最も一般的に用いられていた方法です。(図2参照)
筋かい端部の接合方法を工夫したものは、前年度の実績からガセットプレート方式とし、ガセットプレートの材料としては構造用合板とコンパネ、接合具としては釘(鉄丸釘)と木ねじで、これらを組合せて4仕様の実験をしました。ここでは4仕様を代表して、TIP構法の前身にあたる「構造用合板と釘」の組合せを「ガセット仕様」と名づけ「公庫仕様」との比較をご覧いただくことにします。なお、各仕様とも試験体3体ずつの加力試験を行い、同じ変位時の荷重3データの平均値を算出して当該仕様の荷重変位曲線を作成しました。この3体の平均値を使うのは、木材の品質のばらつきを考慮したためで、これも日本建築センターの試験方法にならいました。
以前の実験と違って、測定したデータはすべて自動的にパソコンに取り込める様になったので、データの管理が極めて容易となり、複数のデータを一つの座標軸上に描いて比較することが簡単にできる様になりました。以下、試験体立面図と接合部詳細図および性能を比較するための荷重変位曲線についてご説明します。

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試験体立面図は前述の軸組に、間柱(27×105)と筋かい(45×90)を入れたもので、上段は公庫仕様、下段はガセット仕様です。また、それぞれ左側は筋かいに圧縮力が掛かるパターン、右側は引張力が掛かるパターンです。(図3参照)

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接合部詳細図は筋かい端部の取り付け方や筋かいを取り付ける柱と横架材の接合方法を詳しく示す図面です。公庫仕様は共通仕様書に記載されている方法で、筋かい端部の取り付け方は前述のとおり、その他柱と桁の仕口はZマーク表示金物のかど金物CP・TおよびCP・Lを使用しました。(図4参照)

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ガセット仕様では、筋かいの上下端の仕口だけにガセットプレートを使用し、その他の仕口はかど金物CP・Lを使用しました。(図5参照)
荷重変位曲線とは試験体の桁の端部に荷重をかけて桁を変位させ、柱頭(桁)の変位を横軸に、かけた荷重を縦軸にとってグラフ化したものです。当然のことですが荷重の方向と変位の方向は同じです。最初のグラフは筋かいに圧縮力が作用する場合、次のグラフは筋かいに引張力が作用する場合、最後のグラフは圧縮と引張の平均値です。圧縮ではほぼ同じですが、引張ではガセット仕様の方が公庫仕様より強いので、圧縮と引張の平均ではガセット仕様の方が強いことが判ります。また、荷重の最大値を試験体の強度とすれば、ガセット仕様では圧縮パターンと引張パターンの強度がほぼ等しくなっています。実を言えばこれは偶然ではないのです。釘の本数やガセットプレートのサイズを決定する際、引張パターンと圧縮パターンの強度が等しくなる様に設計した結果なのです。(図6参照)

< 図6 > |
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