第4回 東京工芸大学構造研究室における実験(昭和61年度− NO.1)

 昭和60年度の実験で45×90筋かいの端部を構造用合板ガセットプレートで接合した耐震壁が公庫仕様の耐震壁と同等以上の性能を発揮することが判りました。そこで61年度はラス下地板(外壁仕上げの下地材で建築法令上の木ずりに相当する)の性能を調べることにしました。方針としては、公庫の仕様書に示されている様に水平に張ったものと、斜め45度に張ったもの(以下斜め張り)との比較です。

 下地板の斜め張りについては、わが国の建築構造学の創始者ともいうべき佐野利器先生(超高層ビル建築で文化勲章を受章された武藤清博士の師であり岳父にあたる先生)が、大正6年「家屋耐震構造論」の中で「洋風家屋漆喰下の木ずりはこれを斜めに打ちつくべし」と推奨されています。また、佐野先生の弟子にあたる田辺平学先生は、木造の各種耐震壁の実験のなかで、木ずりを水平に張った耐震壁や斜めに張った耐震壁の実験も行っています。その試験結果を見れば、斜め張りは水平張りに対し剛性が約3倍、強度は約2.3倍となり、斜めに張ることで耐震性能が著しく向上することがよく判ります。

 ところで、ラス下地板は無開口であれば法令上耐震壁と見なされますが、窓などの開口があれば耐震壁とは見なされず、雑壁とか非耐震壁と呼ばれます。しかし、現実には雑壁も地震力を負担するわけですから、開口のある壁についても実験しておく必要があると思い、無開口壁のほかに垂壁・腰壁・窓開口壁についても、水平張りと斜め張りの比較実験を行いました。但し、ここでは垂壁と腰壁は省略して、無開口壁と窓開口壁について詳しくご説明します。


(1)無開口壁の部

※図をクリックすると拡大されます。

 無開口壁試験体は単体試験体用軸組(前年度の図1参照)の3本の柱と柱の間に1本ずつ米栂の間柱(27×105)を取り付け、杉のラス下地板(11×80)を張ったもので、上段は公庫仕様、下段はガセット仕様です。公庫仕様は、左右対称だから1パターンですが、ガセット仕様では、下地板の張り方に右上がりと左上がりがあるので2パターンになります。ガセット仕様の左側の図は、下地板に圧縮力が掛かるパターンで、右側は引張力が掛かるパターンです。(図1

< 図1 >
 接合部については、公庫仕様はZマーク印のかど金物CP・LおよびCP・Tを使用、またガセット仕様では、構造用合板のガセットプレートおよびZマーク印のかど金物CP・Lを使用しました。(図2

< 図2>
 荷重変位曲線はパソコンに取り込んだデータをもとにして作成するもので、変位に対応する荷重はパソコンから読み取ることができます。そこで荷重のうち最大値を強度と定義して強度の比較をして見ましょう。判り易くするために公庫仕様の強度を1としてガセット仕様の強度を計算すると、圧縮パターンは5.9、引張パターンは6.1で平均すると6になります。ラス下地板を斜め45度に張ったガセット仕様は、柱と横架材の接合部に用いたガセットプレートの効果と相俟って、公庫仕様の6倍の強度になることが判りました。強度が激増することのほかに、圧縮パターンと引張パターンの強度がほぼ同じ、すなわち方向性がないということも注目に値することです。(図3

< 図3 >


(2)窓開口壁の部

 開口壁試験体用軸組は単体試験体用軸組(前年度の図1)の真ん中の柱を除いたもので、柱は両端の2本になります。窓開口壁試験体は開口壁試験体用軸組の垂壁部分と腰壁部分それぞれに3本ずつ米栂の間柱(27×105)を入れ、その上から杉のラス下地板(11×80)を張ったもので、上段は公庫仕様、下段はガセット仕様です。但し、ガセット仕様では下地板を折り返して張るために、中心の間柱は見付を45mmとひと回り大きくしました。窓開口の場合は公庫仕様もガセット仕様も左右対称なのでそれぞれ1パターンです。(図4

< 図4 >
 接合部については、公庫仕様は2本の柱の上下端四隅にZマーク印のかど金物CP・Lを、ガセット仕様では四隅に構造用合板のガセットプレートを使用しました。(図5

< 図5 >
 試験結果は荷重変位曲線を見ればお判りの様に、どの変位で見てもガセット仕様の方が公庫仕様より大きな値になっています。窓開口壁の場合も最大荷重で強度の比較をして見ましょう。窓開口壁では公庫仕様を1とするとガセット仕様は4.2となります。(図6

< 図6 >
 さて、ここで公庫仕様の無開口壁とガセット仕様の開口壁の比較をして見ましょう。前に述べたように公庫仕様の無開口壁は法令で認められた耐震壁ですが、ガセット仕様の開口壁は雑壁とも呼ばれる非耐震壁です。一般の常識では、国が定めた耐震壁が雑壁より劣っている筈はないとお思いでしょうが、このグラフを見れば一目瞭然、ガセット仕様の雑壁のほうが、国で定めた耐震壁よりはるかに丈夫であることが判ります。因みに、変位量215mmまでの範囲で最大荷重を比較すると、ガセット仕様の雑壁は公庫仕様の耐震壁の4.2倍になります。これは、四隅に取り付けたガセットプレートの効果と斜めに張った下地板の効果の相乗作用によるものです。(図7

< 図7>

 


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