第14回 TIP構法の広幅筋かいについて

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 建築基準法施行令第46条(構造耐力上必要な軸組等)の第3項表1は耐震壁を構成する「軸組の種類」とその「倍率」を示しています。この表の中で、「厚さ1.5cmで幅9cmの木材」、「厚さ3cmで幅9cmの木材」、「厚さ4.5cmで幅9cmの木材」、「9cm角の木材」の4種類が木造筋かいとして規定され、それぞれ倍率が与えられています。これらの数字はすべて筋かいの断面の大きさを示すもので、非常に具体的で判りやすくなっています。ところが、この表は平成12年の建築基準法の改正により、第4項の表1と変わり、その内容も「厚さ1.5cm以上で幅9cm以上の木材」、「厚さ3cm以上で幅9cm以上の木材」、「厚さ4.5cm以上で幅9cm以上の木材」、「9cm角以上の木材」と厚さや幅を示す数字の後にすべて以上という二文字がつけられて漠然としたものになりました。基準法改正前の4種類の筋かいは、幅を9cmで統一し、厚さを1.5cm、3cm、4.5cm、9cmと変化させ、厚さすなわち断面積に応じて倍率を決めているのでそれなりに合理性がありました。それなりにというのは理由があります。筋かいが有効にその機能を発揮するためには、筋かいの部材断面相応の接合部が必要ですが、当時の法令では筋かい断面にふさわしい接合部の具体的提案はなく、抽象的な文言で表現されていて専門家でも理解し難いものでした。そのため、住宅金融公庫の木造住宅工事共通仕様書に準拠したもの以外は、かなり怪しげな施工が行われていても法的には問題になりませんでした。例を挙げれば、筋かい端部に長さ9cm程度のくぎを3本または2本、極端な場合はたった1本「斜め打ち」しただけで、筋かいとしてまかり通っていました。筋かいの耐力をその断面積によって4段階に分けたように、接合部も筋かいの種類に合わせて何段階かに分け、具体的に決めて置くべきではなかったかと思います。

 ところで、TIP構法では施行令とは逆に、筋かいの厚さを4.5cmに統一し、幅を当初の9cmのほかに10.5cmと12cmを加え、都合3種類の筋かいを想定しました。筋かいの幅を広げることでガセットプレートの面積をいたずらに広げずにくぎの本数を増やし、筋かいの断面にふさわしい接合部を作ることができると考えたからです。具体的に説明すると、TIP構法の通常の筋かいは幅が9cmで、くぎ列の間隔は1.5cmとしていますから、幅を広げることで10.5cmでは1列、12cmでは2列、くぎ列を増やすことができます。さらに、ガセットプレートのサイズを上げれば、くぎの総数を自由に増やすことができるので、筋かいの断面積に見合った接合部を作ることができます。これは、いわゆる「接合部設計」というもので、鉄骨造の筋かいの設計で用いられる構造設計手法の木造軸組構法への応用です。こうして、接合部設計の手法を取り入れ、4.5cm×10.5cmと4.5cm×12cmの筋かい端部接合詳細図を作成し、それぞれについて4.5cm×9cm筋かいとの比較実験を行いました。

 
■ TIP構法45×105筋かいと45×90筋かいの比較(単位はmm)


 図1は試験体の立面図で、上段は45×90筋かい入り耐震壁で、下段は45×105筋かい入り耐震壁です。また、それぞれ、左側は圧縮パターン右側は引張パターンです。図2は筋かい端部の接合部詳細図で、(1)は45×90筋かい、(2)は45×105筋かいの場合です。
図3図4はTIP仕様45×105筋かいを使用した耐震壁と45×90筋かいを使用した耐震壁の荷重変形曲線で、図3は筋かいに圧縮力が作用する場合、図4は筋かいに引張力が作用する場合です。また、図5は変位ごとに、圧縮力が作用する場合の荷重と引張力が作用する場合の荷重の平均値に対する荷重変形曲線です。
 図3の圧縮パターンでは変位25mmで1.25倍、50mmで1.26倍、100mmでは1.24倍で、45×105筋かいは単純平均で45×90筋かいを約25%上回っています。一方、図4の引張パターンでは、変位25mmで1.24倍、50mmで1.29倍、100mmでは1.39倍で45×105筋かいは単純平均で45×90筋かいを約31%上回っています。また、図5の平均値では25mmで1.24倍、50mmで1.28倍、100mmでは1.32倍で45×105筋かいは単純平均で45×90筋かいを約28%上回っています。なお、平均値の最大荷重を耐震強度とすると、45×105筋かい入り耐震壁は45×90筋かい入り耐震壁の1.33倍の耐震強度を有していることがわかります。なお、両者の断面積を比較すると45×105は45×90の1.17倍です。従って45×105筋かいと45×90筋かいを比較すると断面積の17%増に対し耐震強度は33%増になるということがわかりました。

 
■ TIP構法45×120筋かいと45×90筋かいの比較(単位はmm)


 図6は試験体の立面図で、上段は45×90筋かい入り耐震壁で下段は45×120筋かい入り耐震壁です。また、それぞれ、左側は圧縮パターン右側は引張パターンです。45×90筋かい端部の接合部詳細については前述の図2の(1)で、45×120筋かい端部の接合部詳細は図2の(3)です。図7図8はTIP仕様45×120筋かいを使用した耐震壁と45×90筋かいを使用した耐震壁の荷重変形曲線で、図7は筋かいに圧縮力が作用する場合、図8は筋かいに引張力が作用する場合です。また、図9は変位ごとに、圧縮力が作用する場合の荷重と引張力が作用する場合の荷重の平均値に対する荷重変形曲線です。図7の圧縮パターンでは、変位25mmで1.34倍、50mmで1.36倍、100mmでは1.29倍で45×120筋かいは単純平均で45×90筋かいを33%上回りました。一方、図8の引張パターンでは、変位25mmで1.43倍、50mmで1.50倍、100mmでは1.54倍で、45×120筋かいは単純平均で45×90筋かいを49%上回りました。また、図9の平均値では25mmで1.39倍、50mmで1.43倍、100mmでは1.42倍で45×120筋かいは単純平均で45×90筋かいを約41%上回りました。また、平均値の最大荷重を耐震強度とすると45×120筋かい入り耐震壁は45×90筋かい入り耐震壁の1.40倍の耐震強度をもっている事がわかりました。ここで、両仕様の筋かいの断面積を比較すると45×120は45×90の1.33倍です。従って45×120筋かいと45×90筋かいを比較すると断面積の33%増に対し耐震強度は40%増になることが判りました。

 
■ むすび

 鉄骨造の工場や体育館などの設計で筋かいを用いる場合は、筋かいに生じる応力または筋かいの断面積に対して、ガセットプレートの厚さと大きさおよびボルトの本数を算定するのが一般的です。ところで、TIP構法は開発当初から鉄骨造のガセットプレート方式を採用していたので、筋かい端部の接合部設計の手法を受け入れて対応してきました。当初は45×90筋かいからスタートし、平成7年の阪神大震災を西宮市で経験し、TIP構法の丈夫さが実証されマスコミにも高く評価されましたが、それにもかかわらず、一段と高い耐震強度をもつTIP構法を望む声があがり、その声に応えるために種々検討した結果、広幅筋かいの開発に着手しました。広幅筋かいとしては「45×105筋かい」と「45×120筋かい」を想定し、入念に端部の接合部設計を行った上で試験体を造り、それぞれの試験体と「45×90筋かい」を入れた試験体との比較実験を行いました。

 その結果「45×105筋かい」および「45×120筋かい」の耐震強度は「45×90筋かい」の1.33倍および1.40倍となることが判りました。しかし、TIP構法の広幅筋かいは改正基準法の施行令では、いずれも「厚さ4.5cm以上で幅9cm以上の木材」と見なされ「倍率2」しか認められません。断面積を大きくしてそれに見合った接合部を作れば、実験結果からも判るように当然、耐震強度も大きくなるわけですが、現在の法令ではすべて「45×90筋かい」と同等と見なされ「接合部設計」の途は閉ざされてしまいました。

 以上の述べたように、TIP構法の広幅筋かいは、実際には大きな耐震強度があるにもかかわらず、法的には実力以下の低い評価をされています。したがって、耐震壁の配置と壁量の条件が同じ住宅であれば、TIP構法の広幅筋かいを採用したものは、一般の軸組構法で45×90筋かいを採用した住宅に較べて極めて高い耐震強度を保有する住宅になるということがお判りいただけると思います。
 


図1



図2


図3


図4


図5


図6


図7


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図9

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