第3回
構造と構法

 
 家造りの出発点は構造の選択です。構造とは、住宅の生活空間を自重や地震などの外力から守るための構成要素のことで、大別すると鉄筋コンクリート造(以下RC造という)・鉄骨造・木造等に分類されます。

 東京オリンピックに備えて建設投資が急激に増加したため、その頃を境に劣悪なRC造が急増したことは、ご存じの方も多いと思います。私が大学で教鞭を執っていた頃のことですが、一年生の講義科目のなかに、建築学概論という必修科目がありました。この科目は新しく建築学科に入ってきた学生に、建築学科で学ぶことの全貌を広く浅く知って貰うために設けたもので、全教員がオムニバス形式で、自分が教える授業科目の概要を講義するという特別の科目でした。その科目のなかで毎年私は、RC造の問題点について講義して参りましたが、そのなかで指摘していた心配が、兵庫県南部地震で現実のものとなりました。最近は新しい技術が取り入れられ、多少改善されていることとは思いますが、それでもRC造については心配な事が多過ぎます。従って、3階建て以下の比較的規模の小さい個人住宅にRC造を採用することは、特別の場合を除いて避けたほうがよいのではないでしょうか。

 鉄骨造の場合についていえば、軽量鉄骨の角パイプを使用するものと、肉厚の厚い重量鉄骨を使用するものがありますが、前者の場合は、生産方式からいうと工業化住宅の範疇に属するもので、通常は大手のハウスメーカーが供給する場合が一般的です。竣工後は木造の場合と殆ど区別がつきませんが、建築主が、木造にこだわる工務店と軽量鉄骨のハウスメーカーのどちらを選ぶか、強いて言えば、建築主が木造と軽量鉄骨造のどちらが好きかで決められることだと思います。ただし、骨組みの軽量鉄骨は一般に肉厚が薄いので、錆の発生が大敵です。防錆処理は当然きちんと行われている筈ですが、海岸に近く潮風があたるところなどはどうしても錆びやすいので避けたほうがよいでしょう。

 また、骨組みに重量鉄骨を使用する住宅の場合、外壁は通常ALC板と呼ばれる材料を張りつけるのが一般的です。鉄骨骨組みの変形し易さに対し、ALC板は変形し難い面材なので、ALC板が骨組みの変形について行けず、取付け箇所や面材と面材のつぎ目がいたみやすいので、外壁からの雨漏りの原因となっているようです。

 最後に登場したのが木造ですが、木造住宅と言っても大別すると2種類あります。昔から伝わってきた軸組構法と、戦後わが国に入ってきた枠組壁工法に代表される壁式構法です。木造軸組構法が兵庫県南部地震に際して、不幸にも一部のマスコミにより過小に評価されたことを私は真に残念に思います。軸組構法は寿命が長く、それだけに古い住宅も多かった筈です。建築基準法は1950年に制定されてから、1959年と1980年に2回改正が行われましたが、その都度、おおむね耐震壁を増やさなければならない方向の改正ですから、1980年以前に建てられたものは現行の法令に照らすと耐震壁の量がかなり少なく、1959年以前のものは更に少なくなっていると思います。基準法を改正しても、「国」も「地方自治体」も耐震壁を増やしなさいとは言わなかったので、知らないうちに「既存不適格」の住宅になっていたのです。この、耐震壁の不足と径年変化による構造躯体の劣化が、軸組構法の被害を大きくしたのです。

 特殊な用途に用いられる正倉院の校倉造りは別にして、1000年を越える世界最古の法隆寺をはじめ、わが国の歴史的木造建築物はすべて軸組構法です。この様に、ながい年月にわたって風雪に耐えることができたのは、木造軸組構法が日本の気候・風土に最も適した構法であるからではないでしょうか。永い歴史にのなかで培われ、今日迄続いてきたわけですから、優れた構法であることは間違いありません。従って、適切な設計が行われれば、軸組構法は必ず「丈夫な住まい」をもたらしてくれるでしょう。

 一般に街なかで見かける住宅や住宅展示場などで目にする住宅は、完成後の状態なので仕上げ材に覆われて構造躯体が何であるか判りません。うっかりすると営業マンのセ−ルスト−クにのせられて契約を結び、後になって構造躯体が何で造られているかを知るというようなことが起こりかねません。ご自分の住まいの構造と構法をなににするかは、事前に充分検討した上で建主が主体的に決定すべき課題だと思います。

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