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第11回 筋かいについて
筋かいは明治の末期頃から、建築構造学者たちが木造住宅に使用した場合の耐震上の効用を説いてきましたが、官民ともにあまり関心を示しませんでした。いちはやく採り入れていれば、死者・行方不明者約142,000人、家屋の全半壊約254,000件という関東大地震の被害はずっと少なくて済んだのではないかと残念でなりません。関東大地震のあと、その教訓が活かされることもないままに20数年を過ごし、その間、更に12件の大地震がやってきて、多くの国民の生命と財産を奪いました。
政府がやっと重い腰を上げたのは、死者3,769名、家屋全半壊48,000棟という大惨事を招いた福井地震のあとのことです。福井地震の2年後の昭和25年に建築基準法および施行令が制定され、その中で「筋かい」がはじめて採り入れられました。同年「国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足る住宅の建設及び購入に必要な資金を融通することを目的として」設立された住宅金融公庫がスタートし、融資の条件として建築基準法の遵守が求められるようになりました。以後、筋かいは急速に普及して、いまや、木造軸組構法住宅には不可欠のものとなりました。
ところで,筋かいに関して私は以前から疑問に思っていることがあります。施行令の45条(筋かい)の1項では「引張り力を負担する筋かいは、厚さ1.5cmで幅9cmの木材・・・・・」2項では「圧縮力を負担する筋かいは、厚さ3cmで幅9cmの木材・・・・・」という文言があります。2項の圧縮力を負担する筋かいの条件を満足していれば、当然、引張力も負担できる筈なのに、あえて圧縮力を負担する筋かいと呼ぶのは何故でしょうか。
その謎は木構造の大家である杉山先生の著書「木造の家は地震に強いか」(講談社昭和60年6月20日第1刷発行)で氷解しました。以下に先生の文章を引用させていただきます。
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「筋かいは太いもの(柱二つ割りより大きい断面)は圧縮に耐えるが、大貫のように細いものは座屈して利かない。しかし大貫はその端部の仕口に釘を五、六本打てば引張に対しては利かせることができる。太い筋かいは引張に当然利くはずであるが、引張に強い木材の性質をフルに活用しようとすると、頑丈な金物を使って端部仕口を固めなくてはならない。材の強さより仕口の強さが問題になってくるのである。これは手間も金もかかるから嫌われる。それなら中途半端な固め方をするより、いっそのこと仕口の固めが要らない圧縮だけに利かせ、引張の方は諦める方が得策ということになる。以上に述べたことから、専門家の間には、『圧縮に利かせる筋かい』、『引張に利かせる筋かい』という呼び方が存在する。」
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引張りは諦めた方が得策という木構造の専門家に対し、私は引張りに強い木材の性質を活用しないのは勿体ないので、引張りにも効く筋かいが造れないかと考えました。
目を転じて鉄骨造で筋かいを用いる場合を見てみると、鉄骨造の筋かいは「座屈」のために圧縮には利かず、もっぱら引張りだけを期待しています。それでは、鉄骨造の端部仕口はどうなっているのでしょうか。鉄骨造で筋かいを入れる場合は、ガセットプレートと呼ぶ鉄板を柱と梁に溶接等の方法で取付けて、そのガセットプレートにボルト等を用いて筋かいの端部を取付けます。そこで私は、木造住宅の筋かいにガセットプレ−ト方式を採り入れることにより、木材の引張り強度を引き出せないかと考え、ガセットプレ−トの材料としては鉄板の代わりに構造用合板を、また接合材としてはボルトの代わりに釘を用いて実験を重ねました。その結果、木構造の専門家の常識を乗り越えて、圧縮にも引張りにも利く筋かいができあがりました。
平成2年秋に着手した第1号住宅以来、ガセットプレートは構造用合板を用いていましたが、平成12年に住宅の品質確保促進法が制定され、また建築基準法の改正が行われましたので、それにあわせてTIP構法も今まで以上に「品質の確保」と「性能の向上」を計ることとし、工場生産による「鉄板補強ガセットプレート」を用いることにいたしました。この新しい「鉄板補強ガセットプレート」を使うようになってからは「施工管理」や「品質管理」が行い易くなり、それに伴って建築主の信頼も大きくなったと喜んでいる会員は少なくありません。
| 筋かいに作用する力 |
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上図の様に、左側から地震力が作用すると、骨組は点線のように変形して筋かいには引張力がかかります。 |
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上図の様に、右側から地震力が作用すると、骨組は点線のように変形して筋かいには圧縮力がかかります。 |
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