第15回   NHKスペシャル阪神大震災シリーズ(第5回)を見て(その2

〔2〕仕口及び筋かい端部の施工不良
 

 建築基準法施行令第45条(筋かい)の3項は「筋かいは、その端部を、柱とはりその他の横架材との仕口に接近して、ボルト、かすがい、くぎその他の金物で緊結しなければならない。」とあります。同じく第47条(構造耐力上主要な部分である継手又は仕口)の1項は「構造耐力上主要な部分である継手又は仕口は、ボルト締、かすがい打、込み栓打その他これらに類する構造方法によりその部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない。」とあります。
 
 この文章はあまりにも抽象的であり過ぎると思いませんか。この文章を読んで、これを正しく理解し、正しく施工できる人が果たしてどれだけ存在するのでしょうか。その部分の存在応力を伝えるように緊結しなさいということですが、その部分の存在応力とはなんのことですか。それを計るのにはどうすればいいのですか。また、その部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならないということですが、そのためには何をどう使えばいいのですか。住宅の設計者や施工管理者でも、殆どの人は確かな答えを出せないのではないでしょうか。
 
 その部分の存在応力を知るには構造計算をしなければ答えは出ないし、また、どんな金物を何処にどう使ったら緊結したことになるのか、これも木構造に詳しい熟練の構造技術者でなければ答えは出せない筈です。ところで、2階建て木造住宅では一般に構造技術者は関与しないので、木構造の構造計算など一度も経験したことのない工務店経営者または設計者・現場管理者が的確な方針を示すことのないままに大工職にまかせてしまうのが通例です。一方、木工事一式をまかされた大工職は、建築主の期待をどう受けとめ、その住宅の耐震性能の確保するためにどう対処していたのでしょうか。
 
 スペシャル番組を見ながらその実態を検討して見ましょう。番組では神戸市東灘区の大工職70人に対し震災前、筋かいをどのように留めつけていたかをアンケートしたところ、結果は図の通りでした。図の左側の「釘」は釘だけで留めつけているもので61%、右側の「金具」(通常は金物といいます)は金物と釘などで留めつけているもので39%です。
 
図

 「金具」の上段は、筋かいの端部と土台(またはその他の横架材:以下同様)がひら金物で接合されていると同時に、柱と土台が山形プレートで接合されています。下段は筋かい端部が筋かいプレートを介して土台と柱に接合されいると同時に柱と土台が山形プレートで接合されていています。
 
 しかし、「釘」の方の上段は筋かいから柱に釘を2本斜めに打ち込んだだけ、下段は土台の一部を欠き込み、そこに筋かいの先端を合わせて端部に極めて近いところで土台に向けて釘を3本斜めに打ち込んだだけです。柱と土台の接合は、土台にあけたほぞ穴に柱のほぞを差し込んだだけです。地震の際、筋かいが地震力に抵抗すれば筋かいが取り付く柱に引抜き力が働くので、柱が抜けないように土台と柱を結び付けることが必要なのですが、それは完全に無視されています。それ以前に、この様な接合の仕方では、大地震の際、一瞬のうちに釘が抜けてしまって折角の筋かいが殆ど機能してくれません。
 
 阪神大震災で多くの住宅が倒壊した原因の一つは、「仕口及び筋かい端部の施工不良」だったと言わざるを得ません。仕口及び筋かい端部の接合に関しては、住宅金融公庫の木造住宅工事共通仕様書で図の右側の様に金物を使用するよう規定されていましたが、61%の大工職はこうした方法を選ばなかったということになります。かりに「金具」が39%ではなくて100%だったとしたら、阪神大震災による住宅の倒壊はずっと少なかったのではないでしょうか。
 
 因みに、番組のなかでも、工学院大学の宮沢助教授(当時)が行った「筋かいとラス下地板を併用した耐震壁」の静的水平加力実験が紹介されていましたが、筋かい端部に右側「金具」の下段「筋かいプレートと山形プレートを使用」した場合は1000Kg以上の水平力に耐えられるのに、左側「釘」の上段「釘2本斜め打ち」の場合は650Kgしか耐えられず釘のみの接合による耐震壁は耐震性に乏しい耐震壁であるということが実証されていました。

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