第17回 ホールダウン金物(引き寄せ金物)の効果
在来軸組構法住宅の単位の骨組みを構成する長方形の軸組の柱頭に水平力を掛けると、軸組みは簡単に変形して平行四辺形になります。この様な軸組だけで構成した住宅は地震力によって大きく変形し、そのまま倒壊に至ってしまうので、住宅を地震から守るために、当該住宅の中の数ある軸組のうち、幾つかの軸組に「厚さ3cm以上、幅9cm以上の木材」を斜めに入れた「筋かい入り耐震壁」を設けます。
筋かいを入れた耐震壁は、筋かいの断面や接合部の関係で、耐震強度が様々に変化しますが、一般に、筋かいの断面積が大きいほど耐震強度も大きくなります。ただし、筋かいの断面積に応じて接合部も丈夫にしなければなりません。接合部が弱いと接合部が先に破壊してしまうので、折角大きい断面の筋かいを使用してもその性能を充分に発揮することができません。
TIP構法では45×105筋かいや45×120筋かいを使用した耐震壁の試験体を作成し、45×90筋かいを使用した耐震壁よりどれだけ耐震強度が増強されるかを実験により確かめました。この実験結果については「TIP構法の広幅筋かいについて」をご覧下さい。ところでこの実験のなかで気になることがありました。それは、筋かいの頂部が取り付く柱の柱頭に水平力を掛けたとき、筋かいの断面が大きくなると、その柱の脚部に大きな引き抜き力が働いて、角金物ていどの接合金物では大きく変形して一番先に破壊してしまうということです。そこで、この部分にホールダウン金物を用い、柱脚の引き抜き力を直接土台に伝えるようにすれば、耐震強度が更に増強するのではないかと考えました。そこで、当該柱の脚部に角金物を使用した場合とホールダウン金物を使用した場合について比較実験をすることにしました。なお、ここでは45×120筋かいを使用した試験体についてご説明します。
図1は試験体の立面図です。試験体には二つのパターンがあり、左側は筋かいに圧縮力が掛かるパターンで、右側は筋かいに引張力が掛かるパターンです。また、図面の上段は筋かい上部が取り付く柱の脚部に角金物を用いた場合で、下段はホールダウン金物を使用した場合です。図2は各部の接合部詳細図です。
図3と図4はホールダウン金物を使用した耐震壁と角金物を使用した耐震壁の荷重変形曲線で、図3は筋かいに圧縮力が作用する場合、図4は筋かいに引張力が作用する場合です。また、図5は変位ごとの、圧縮力が作用する場合の荷重と引張力が作用する場合の荷重の平均値に対する荷重変形曲線です。図3の圧縮パターンではすべての変位でホールダウン金物付きが角金物付きより勝っているほか、ホールダウン金物付きの最大荷重1544Kgは角金物付きの最大荷重1068Kgの1.45倍になります。ホールダウン金物が柱脚の引き抜き力を抑えてくれたので耐震強度が45%も増加したということになります。図4の引張パターンでは最大荷重では多少の違いは見られるものの荷重変形曲線はほぼ類似しています。引張パターンではホールダウン金物を取り付けた柱の脚部には圧縮力が働くので、ホールダウン金物の出番が無かったためと考えられます。
図5の平均値ではホールダウン金物付きの最大荷重は1508Kg、角金物付きの最大荷重は1233Kgで前者は後者の1.22倍となりホールダウン金物の効果は十分認められました。この様に、筋かいの断面積を大きくして、引き抜き力の大きい部分にホールダウン金物を取り付けて補強すれば、耐震壁の耐震強度が更に増加するということが実験により確かめられました。
なお、参考までに、図6で、45×120筋かいを使用し、柱脚の一部をホールダウン金物で補強した耐震壁と、昭和60年度に実施した45×90筋かいを使用した住宅金融公庫仕様耐震壁およびTIP構法仕様耐震壁の荷重変形曲線を示します。当然のことですが荷重は圧縮パターンの荷重と引張パターンの荷重の平均値を用いました。
この荷重変形曲線によれば、TIP仕様45×120筋かい(ホールダウン金物付き)の最大荷重は1508Kgで公庫仕様(昭和60年度)の最大荷重725Kgの2.08倍、TIP構法仕様(昭和60年度)の最大荷重887Kgの1.7倍に達し、ホールダウン金物を有効に使用すれば、耐震強度が非常に大きい耐震壁となることがわかりました。
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