第19回
TIP構法の模型実験(その2)
 
 
(4)ラス下地板斜め張りの効果

 公庫仕様書に見られるように、ラス下地板は水平に張るのが一般的ですが、TIP構法では斜め45度の勾配で張ります。節点に使用するガセットプレートの斜辺に平行に張るわけですが、こういう張り方をするとどんな効果があるのでしょうか。斜め張りの効果を知るためには、公庫仕様と比較すると分かりやすいと思いますので、まず、公庫仕様に準じて張った場合、どれだけの水平荷重に耐えられるか、模型実験で確かめてみましょう。

 
 @)下地板を水平に張った場合


 写真7は基本軸組の全面にわたりラス下地板を水平に張ったものです。ただし、下地板を止め付ける釘は、ピン接合にするため、それぞれ1本にしました。写真8はこの試験体の左側の受台に0.2kgの分銅を載せたときの写真です。試験体軸組は斜め材に沿うよう左側に転倒しました。この試験体は左右対称ですから、右側に載せても転倒することが予測できるので実験は省略します。この結果からお分かりのように、下地板を水平に張ると、たとえ軸組の全面に張っても極めて小さい水平荷重で簡単に倒壊してしまいます。

写真7 写真8
写真7
写真8


 A)右上部に短い下地板を張った場合

 つぎは斜め張りです。斜め張りのはじめは、基本軸組の右上部に台形の短いラス下地板を1枚張ったものです。写真9は模型の左側の受台に0.5kgの分銅を載せたところです。この写真からお分かりのように基本軸組は殆ど傾きません。写真10は右側の受台に0.5kgの分銅を載せたときで、この場合もほとんど傾きません。どちらに載せても、下地板を全面に張った公庫仕様の場合より大きい0.5Kgの荷重に耐えています。短いラス下地板をたった1枚張っただけで、どうしてこんなに丈夫になるのでしょうか。そのわけは、柱と桁の右上隅部分と下地板で三角形ができるので、「三角形不変の原理」により右上隅の節点が剛節点になり、この基本軸組が「右上隅にガセットプレートを取り付けた場合」で述べた「3ピン式ラーメン」に変身したためです。

写真9 写真10
写真9
写真10

 
  B)左下部に短い下地板を張った場合

 写真11は、基本軸組の左下部に台形の短いラス下地板を張った試験体の左側の受台に0.5kgの分銅を載せたとき、写真12は右側の受台に同じ分銅を載せたときの写真で、どちらに載せても殆ど傾きません。柱と土台の左下隅部分と下地板で三角形ができるので「三角形不変の原理」により左下隅の節点が固定端になり、この基本軸組が「左下隅にガセットプレートを取り付けた場合」で述べた「片持ばり型軸組」に変身したためです。

写真11 写真12
写真11
写真12

 以上二つの模型実験は、右上隅と左下隅の節点に一番近い位置に張った台形の下地板を対象に行いにいましたが、その下地板がそれぞれ柱と桁または土台を結び、隅の節点を頂点とする三角形を作って節点を剛節点にしたため、前者は「3ピン式ラーメン」後者は「片持ばり型軸組」となり、それぞれ、それなりの耐震効果を発揮しました。
 それでは、二番目はどうでしょう。二番目の下地板は下地板のピッチの2倍だけ長くなりますが、これも柱と桁または土台を結び、隅の節点を頂点とする三角形を作るので、同様の効果をもたらします。
 

 C)中間部に標準の下地板を張った場合

 柱頭、柱脚まわりの下地板は原則として柱と横架材を結ぶので台形になりますが、その他の中間部に張る下地板は左の柱と右の柱を結ぶことになるので、その形状は平行四辺形に変わります。そこで、つぎは平行四辺形の下地板を張ったときの効果を模型実験で確かめてみましょう。写真13は基本軸組の中央付近に平行四辺形の長いラス下地板を張った試験体の左側の受台に1kgの分銅を載せたとき、写真14は右側の受台に1kgの分銅を載せたときの写真です。この写真からお分かりのようにどちらに載せても殆ど傾きません。

写真13 写真14
写真13
写真14


 1Kgの分銅では殆ど傾かなかったので更に0.5kg追加しましょう。写真15は左側に追加したときで、写真16は右側に追加したときです。追加する前に比べてほんのわずか傾きが増えたようですが、どちらも倒壊の心配はありません。

写真15 写真16
写真15
写真16


 このように、柱と柱を斜めに結ぶ手法は、ヨーロッパやアメリカでは、古くから下地板を張るときに採用していましたが、わが国では残念ながら取り入れられませんでした。
 しかし、この模型実験で、上記のように耐震上極めて有効であることが分かりましたので、この手法の理論的な裏づけを東京工芸大学物理研究室の川畑州一教授に依頼したところ、以下のようなお答えを頂きました。 

 

川畑教授の結論

1. 長さの等しい2本の柱の柱脚は回転端で、柱頭は柱の支点間距離に等しい長さの桁とピン接合された軸組(4隅がピン節点の軸組)の相対する2本の柱を両端ピンの斜め材で結びつけると安定構造となる。
〔筆者注〕木造住宅の耐震壁として使用するため、2本の柱はそれぞれ垂直になるように斜め材を取り付けます。
2. 上記の長方形軸組みの耐震性能は、斜め材の角度が45度のとき最大となる。

注:詳しい事は以下の解説を参照してください。

TIP構法に関する静力学的考察
(PDF書類)

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